LC-FAODとは?
長鎖脂肪酸代謝異常症( LC-FAOD)は、体内で脂肪からエネルギーをつくる代謝の仕組みに異常が生じる、まれな遺伝性の病気です。 中でも、長鎖脂肪酸(LCFA)という脂肪をうまくエネルギーに変換できないことが大きな特徴です。
LC-FAODは、遺伝子の変化によって起こる病気です
LC-FAODにはいくつかのタイプがありますが、すべてが遺伝性の病気です。いずれのタイプも、脂肪をエネルギーに変えるために必要な酵素などのタンパク質の働きに異常がみられます。
LC-FAODは、体の代謝の仕組みに異常が起こる病気です
私たちの体には、食べ物からとった脂肪を分解してエネルギーに変える「代謝」という仕組みがあります。この過程には、体内の化学反応を助ける「酵素」というサポーターが欠かせません。酵素は、脂肪を脂肪酸に分解し、それをさらにエネルギーへと変える働きを担っています。
私たちの体は、普段食事からとったブドウ糖(糖分)を主なエネルギー源として使っています。ブドウ糖が不足したときには、代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくる仕組みがあります。
LC-FAODでは、こうした酵素の働きに異常があるため、脂肪をうまくエネルギーに変換できません。体内のブドウ糖が不足すると、通常は脂肪を使ってエネルギーをつくろうとしますが、LC-FAODではこの仕組みがうまく機能せず、エネルギーのバランスがくずれてさまざまな症状があらわれます。さらに、分解されなかった脂肪酸が心臓や肝臓などにたまり、臓器に悪影響を及ぼすこともあります。
LC-FAODには、特徴的な症状があります
体の中でブドウ糖が不足すると、脂肪を分解してエネルギーをつくる必要があります。しかし、LC-FAODの患者さんはこの脂肪の分解がうまくできないため、エネルギー不足によるさまざまな症状があらわれます。代表的な症状には、筋肉の痛みや筋力の低下、低血糖、だるさ(疲労感)などがあります。
LC-FAODと遺伝の関係
LC-FAODをはじめとする遺伝性の代謝の病気は、代謝の働きを調整するタンパク質をコードする遺伝子に変化があり、それを受け継ぐことで発症します。
LC-FAODは「常染色体潜性遺伝(じょうせんしょくたいせんせいいでん)」という形式で遺伝します。これは、タンパク質の機能を低下させてしまう変化のある遺伝子を両親から1つずつ受け継ぎ、2つそろったときに病気が発症する仕組みです。つまり、LC-FAODを発症するのは、両親がともに変化のある遺伝子を保有している(保因者)場合です。両親がともに変化のある遺伝子の保因者である場合、妊娠するごとに以下のような確率で遺伝する可能性があります。
- 25%の確率で、変化のある遺伝子を2つ受け継ぎ、LC-FAODを発症する子どもが生まれる(左)
- 50%の確率で、変化のある遺伝子を1つ受け継いだ保因者の子どもが生まれる(中央)
- 25%の確率で、変化のない遺伝子を2つ受け継ぎ、病気の影響を受けない子どもが生まれる(右)
LC-FAODの診断について
LC-FAODはまれな病気です。米国では、毎年およそ100人の赤ちゃんがこの病気と診断されており、
現在の患者数は2,000~3,500人ほどと推定されています。 *
一方、日本では、毎年10~50人ほどの新たな患者さんがLC-FAODと診断されていると考えられています。 **
LC-FAODの症状は通常、生まれてすぐや赤ちゃんの頃に出ることが多いですが、病気の進行がゆるやかな場合は、もっと大きくなってから診断されることもあります。
現在は、多くのLC-FAOD患者さんが、生まれてすぐに行われる検査(新生児マススクリーニング)で診断されています。症状や検査結果、あるいはその両方からLC-FAODが疑われる場合には、遺伝子検査で病気かどうかをはっきり調べることができます。
LC-FAODの診断に役立つ遺伝子検査について、ご関心のある方は医師にご相談ください。
新生児マススクリーニングとその他の検査について†
LC-FAODは代謝にどんな影響を与えるの?
症状を見逃さない
長鎖脂肪酸代謝異常症(LC-FAOD)は、命に関わる重い症状や合併症を引き起こす可能性がある、深刻な病気です。
- LC-FAODの症状は発作的にあらわれ、入院や救急受診が必要になることもあります。
- LC-FAODの症状はタイプによって異なるだけでなく、同じタイプでも人によってあらわれ方がさまざまです。
- 生まれてすぐに症状が出る場合もあれば、大人になってから初めて症状が出る場合もあります。また、時間とともに症状が変化したり、時期によってあらわれ方が異なることもあるため、注意深く見守ることが大切です。
新生児期
小児期 / 思春期
成人期
低血糖
(低血糖症)/
肝臓の機能の障害
筋力の低下/
筋肉の分解 (横紋筋融解症)おうもんきんゆうかいしょう
心臓の筋肉のダメージ(心筋症)
LC-FAODの慢性的な症状は、時間の経過とともにあらわれ、数カ月から数年かけて悪化することがあります。このように、長く続くまたは繰り返し起こる症状として、疲れやすさ(倦怠感) 、筋肉の痛み、筋力の低下、頭がぼんやりする感じ(思考力の低下)などがみられることがあります。
これらの症状は、空腹の時間が長くなったときや、風邪などの病気にかかったとき、長時間の運動や強いストレスなどがきっかけで、あらわれたり悪化したりすることがあります。その結果、次のような状態につながることもあります。
これらの症状は、空腹の時間が長くなったときや、風邪などの病気にかかったとき、長時間の運動や強いストレスなどがきっかけで、あらわれたり悪化したりすることがあります。その結果、次のような状態につながることもあります。
- 筋肉の張りが弱くなる
(筋緊張低下) - 筋肉の痛みや筋力の低下
(筋肉痛・筋無力) - 眼の網膜のダメージ*
(網膜疾患)
- 神経の障害*
(末梢神経障害) - 肝臓の働きの低下
(肝機能障害)
*これらの症状は、TFPやLCHADなど特定のLC-FAODのタイプでみられることがあります。 詳しくは医師にご相談ください。
LC-FAODの急性の発作は、突然あらわれることがあり、多くの場合は風邪などの病気や食事を抜いたことがきっかけとなって発症します。ただし、明確な原因がないまま発作が起こることもあります。
また、体内のエネルギーのバランスが急激にくずれることで、次のような重い症状が出ることがあります。
また、体内のエネルギーのバランスが急激にくずれることで、次のような重い症状が出ることがあります。
- 心筋のダメージ†
(心筋症) - 筋肉の分解
(横紋筋融解症)
- 吐き気、胃の不調、食欲不振
- 低血糖
(低血糖症)
LC-FAODの患者さんは、激しい運動や長時間の活動が症状を引き起こすきっかけになることがあるため、日常生活での活動を制限することもあります。
†慢性的な影響を及ぼすこともあります。
乳幼児期に気をつけたいこと
LC-FAODの乳幼児のご家族の方は、代謝のバランスがくずれる「代謝性クリーゼ」に注意してあげてください。
次のような症状があらわれることがあります。
- 神経のトラブル(強い眠気、昏睡、ライ症候群と呼ばれる状態など)
- 心拍の変化
- 筋力の低下
- 食欲不振や食事量の変化
こうした症状がみられた場合は、記録をとり、できるだけ早く医療チームに相談しましょう。